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写真、短歌、日々の思ったこと。
2006年12月14日 (木) | 編集 |
「がんぎの町から」杉みき子
偕成社
¥1400

新潟の上越市(旧高田)に生まれ育った作者の、地元に対する愛情がひしひしと感じられる本です。20年以上前の本で、今ではもう絶版になっています。私は図書館の書庫から出してきてもらって借りました。

作者の杉みき子さんは黒井健さんの絵本で知りました。でもその絵本は、黒井さんの絵は相変わらず素晴らしかったけれど、物語のほうは不思議な感じはするものの、取り立てて面白かったという訳ではありませんでした。

けれど、その絵本の中の一文が、私に、杉みき子さんてどんな人だろう?どういう考えで、どういう本を書いている人なんだろう?と思わせたのです。
その一文は、

「とおく灯台のあかりが明滅し、
 海も、国道も、車たちも、
 みんな夢のなかにいるような月夜である。」

情景がパーっと広がったんです。

「がんぎの町から」に戻りますが、この本は随筆集です。日常の風景の中で、作者が感じ取ったことなどが記されていて、雪国の暮らしや作者の人柄がとてもよく分かる本です。

中には、「わが国の日本海岸は世界で第一の深雪地帯となっている」という、ビックリすることも書いてありました。

世界には積雪の多い地域はあるけれど、そこに住んでいる人間はごく少なく、新潟などのように雪の下で都市?生活が営まれているのは日本だけと言っても良いくらいなのだそう。ちなみに当時シベリアのウラジオストックの最深積雪量が47㎝、高田は377㎝だったそうです。

そうかと思えば、カタツムリの殻は中は空っぽで、どうしてあんなばかでかい荷物を後生大事に引きずっているのだろうと不思議だったが、あれはたぶん、目には見えなくても、カタツムリにとってだいじなものが、いっぱいつまっているに違いない、とか書いてあったりします。

地元にある何の変哲もないお堀端は、市民の憩いの場になっていて、水鳥の憩いの場にもなっている、そしてその集まった人や鳥をなんとなしに見ている自分がいる。

「世の中には、一見、なんの役にも立っていないようにみえながら、じつは、それがそこに存在するということだけで、人びとにはかり知れない恩恵を与えてくれているものがある。」そういうことも書いてありました。

今、この人の書いた「小さな町の風景」という、短い物語を集めた本を読んでいるのですが、その本もまた生まれ育った高田から出ることなく書かれた物語ばかり。読むと心の中が暖かくなるようなお話ばかりです。

杉さんは、自分のことを井の中の蛙だと書いているけれど、私は、自分自身が移り気で、遠くばかりを見て足元が見えないほうだから、こういう人にとても魅力を感じます。なろうと思ってなれるものじゃないから憧れます。

あと「小さな町の風景」を読んでいて思ったのですが、私はどうも杉さんの文体、というか言葉遣いにとても惹かれているようです。幼い頃から本をたくさん読んでいたからか、それとも昭和5年生まれだからか・・・。きれいな言葉がきれいな流れで紙の上に載っている、という感じなのです。
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