写真、短歌、日々の思ったこと。
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2008年09月20日 (土) | 編集 |
 「ナラタージュ」
 島本理生
 角川書店
 2005年2月28日発行
 620円
 
 「これからもずっと同じ痛みを繰り返し、
 その苦しさと引き換えに帰ることが
 できるのだろう。
 あの薄暗かった雨の廊下に。
 そして私はふたたび彼に出会うのだ。
 何度でも。」       本文・帯より。

純粋ということはどういうことか?
何が誠実で、何が裏切りか?
私はこの本を読んで、益々分からなくなってしまった。

続きには、ネタバレあり。

レビューでは、余計な日常生活の描写が多いと指摘されていた。
小説としては確かに、何かあるのかなと構えて読んだら普通の生活の話で、な~んだって感じになるので、それを間延びしていると感じる人もいると思う。
けれど現実には、恋愛以外にやらなければならない、美しくないことが山ほどある、っていうか、そっちの方が多いのも事実だ。
例えば安売りのトイレットペーパーを買うとか、回覧板を持っていったら近所の人につかまって5分くらい話したwとか、そっちの方が、1日のなかで本題(この場合、恋愛)よりも多くの時間を費やしている。
この物語の、大恋愛めいた恋愛や、両親がドイツに赴任とか、後輩のレイプや自殺なんかを現実レベルに見せるのに、作者はわざとああいう普通の間延びしたような日常の描写をたくさん取り入れたのかも、と思った。
私は、日常の生活の中で、他の人が何を考えているのかを知るのが好きなので、こういうなんでもない部分を読むのも好き。
なんでもない部分に、その人が現れている。

葉山先生と泉は、一見、誠実に見える。
だけど、いったい何に対して誠実なんだろうと思う。
葉山先生の奥さんに対して?
(一生騙し続けるのに?)
自分たちの気持ちに対して?
(ずっと一緒にいたい気持ちを、これからずっと殺すのに?)

泉が葉山先生と別れて小野君と付き合うことになった時、先生は平気そうだったと言われて、『平気なわけないだろうっ』『ただ、小野君と一緒にいるほうが君は幸せだと思ったんだ。僕はね、いつだって君が心配なんだ。苦しんだり傷ついたりしないで生きているかどうか。それが守れるなら僕の独占欲なんてどうでもいいし、執着を見せないことを薄情だと取られてもかまわない』と言った、葉山先生。

奥さんが葉山先生の元に戻ることになったことを知って、『良かったなあ、と思う自分が不思議だった。すでに焼けるように熱いまぶたの奥には涙が溜まっていて悲しくないと言えば嘘になるのに。それでも心の底から良かったと思った』、泉。

これほどの思いがありながら、一緒にいないこと。
その思いを風化させるには、どれだけの時間がいるんだろう?
私は、会うということ、何もしていなくても一緒にいる時間を積み重ねるということは、愛情の継続に不可欠だと思っている。
逆に言えば、定期的に会いさえすれば、一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、特に好きでない人にさえ愛着が沸いてしまい、離れがたくなるものだと思う。
好きならばなおさらだ。
好きだから会いたい、会うから好きになる、それの繰り返し。
私は前に、忘れる魔法を知っていると言ったけれど、本当は魔法じゃない。
会わなくなること、連絡を取らなくなること、それが唯一の忘れる方法だと思う。

別々の、二度と交わることのない人生を選んだ二人の思いが、いったいどれだけの時間、風化せずにいられるのか、私はとても意地悪な気持ちで知りたいと思った。
小説だから、それを知ることは出来ないし、小説だから、何とでも言える。
いろんなことを考えさせられた小説だった。
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コメント
この記事へのコメント
発行するの?
発行するの?
2008/09/20(Sat) 13:46 | URL  | BlogPetのにーに #-[ 編集]
こんばんは。
 「壊れるほどに、愛した。
 すべての恋する者たちへ---
 祈りにも似た、絶唱の恋愛文学。」  帯より。
私の持っている書籍は、590円(税別)って書いてあります。
たぶん、いっしょだww

さすが会長、会うことに重きを置いてきましたね(笑)

作者の他の小説は読んでいないのでわかりませんが、この小説では、無駄な日常のできごとも愛し合っている二人の会話もエンディグの描写も、すべてが同じトーンで、演劇の台詞のように感じました。
ていねいに書きこまれていたので感情移入はできるのですが、その分、読み進めるのがたいへんでw

以前、私の感想でも書きましたが、恋というものなどは形を変えて心の中に、ふと思い出すことも含めて残るものだと思います。
多分、それがこの小説のエンディングにおける涙。
心身ともに離れてしまっても主人公の中では一生残り続けて、それが序章の記述なのでしょう。

楽しかったこと、受けた愛、少女の心、これらのものは、自分の中に生き続けさせておくべきです。
忘れる魔法や努力は自分が生きていたことの証にはならなくて。
それと、会うことって大切なのですね。

以上、葉山先生の声色で、台本を棒読みさせて頂きましたw
(スリッパを投げないで下さいっww)
2008/09/20(Sat) 21:12 | URL  | DILI #/I6ykovo[ 編集]
■DILIさん
>私の持っている書籍は、590円(税別)って書いてあります。

すみませんw、実は私のはハードカバーで、定価1400円です。
中古で買いましたので、購入価格は590円未満ですけどw

私の感想は少しばかり、DILIさんとは違っているかもしれません。
私は雑草魂を持っている宇宙人なので、いじめられましたが、それくらいで死のうなどとは思いませんでした。
死ねと言われても、何で私が?って(笑)。
なので、ちょっとそこまでの感情移入ができなくて、こういう弱い人もいるのだから、ガサツな私はいっそう気をつけなければならないと思っただけなのでした。
私には、他人の痛みを本当に理解する能力が欠けているのかもしれません・・・。

ただ、葉山先生が奥さんと別れてないことを言えなかったり、もう二度と会わないさよならをしたはずの泉が、思わず電車で引き返してしまったり、そういう弱さはもんのすごーく理解できますw
困ったことに、その弱さが魅力的にさえ見えてしまうという・・・。

葉山先生は、魅力的です。
だけど、泉を想いつつ奥さんと一生を共にするというのは・・・
奥さんのことも愛しているのでしょうね、もちろん。
そうでなければ(愛しているのではなく、償いのために一緒にいるのだとしたら)、一緒にいる奥さんはそれを敏感に感じ取って、一緒にいるのに孤独を感じそうです。
それに、先生が奥さんに対して、もしも泉を想う以上の想いがないのであれば、奥さんが知らなくて幸せでいられたとしても、それは失礼じゃないのかな、とか、知らなくて幸せならばそれで良いのかも、とか、頭の中がすっかりぐるぐるめくるめいてしまいましたw

ちなみに小野君は最初から好きじゃありませんでしたw
泉ちゃん、何であんなやつと・・・!
葉山先生の代わりに、オーマイガッ><でした。

誤解を招く書き方だったかもしれませんが、忘れる、というのは、完全消去のことではないです。
人生でリセットは、無理です。
説明するのが難しいw

エンディングの涙は、私には形を変えて残っている恋には見えませんでした。
あれはまさに、今現在の恋。
全っ然、色あせていない、ふと思い出せるような淡い恋へと形を変えていない、あの日別れたその時のままの恋のように感じました。
「壊れるほどに、愛した」ではなく、「壊れるほどに、愛している」で、現在進行形なのだと思います。
本の一番最初の場面で、「記憶の中に留め、それを過去だと意識することで現実から切り離している」というところからして、意識しなければ過去にできないということだと思いました。

これから結婚するのに、これからも絶対同じ道を進めない(進まないと決めている)のに、そんなのは苦しすぎると思いました。
その人の気配がするだけであんな風に崩れてしまう、心が乱れてしまうのであれば、DILIさんの言う形の変わったものになるまで、共通の知人からのその人の気配さえ届かない所へ、自分を置くしかないと思うのです。
出来上がってないのに、蓋を開けたらダメですw

簡単に言ってしまえば、私の中では、”形が変わる=色鮮やかから懐かしい感じの恋に変わる=忘れる”ということかも。

>それと、会うことって大切なのですね

物覚えが悪く妄想が酷い性質なのでw、会う会わない、連絡するしないは私にとってとても重要です。
本の二人のように,会いもせず、電話やメールなどの連絡さえない状態で何年も、そんなのは難しいように思います。
私にはやっぱり、愛というものが分かっていないのかも知れないと、ちょっと落ち込みました。
2008/09/21(Sun) 01:35 | URL  | のさかりう #uv1XZDJs[ 編集]
■に-に
発行よりも、むしろ発酵のほうが私は好き。
2008/09/21(Sun) 01:36 | URL  | のさかりう #uv1XZDJs[ 編集]
こないだ図書館で借りてゼロ円で読みましたw

日常描写は好きなのでそれはいいのですが。大事なものは一つではないよなぁと思います。葉山先生が奥さんも何もかも捨ててしまうのは不可能ではないけれど、現実的でないというか。私は葉山先生が誠実とは思えません。良くも悪くも大人の対処のように思います。まぁ、ちょっと格好つけすぎですけどねw
ちなみに小野くんはコンビニの場面で駄目だ…!と思いました。それまでは一生懸命で可愛いなぁと思ってたんですが。一番男前なのは黒川くんだと思います!
2008/09/21(Sun) 19:42 | URL  | 空猫 #-[ 編集]
■空猫ちゃん
>こないだ図書館で借りてゼロ円で読みましたw

図書館良いよね、その次はBOOKOFFで、その次がヤフオクw

>大事なものは一つではないよなぁと思います。
>葉山先生が奥さんも何もかも捨ててしまうのは不可能ではないけれど、現実的でないというか。

ああっ!?
アナタ、なんでそんなに大人発言しちゃうわけw?
なんか今、焦りを覚えたわ私e-330

葉山先生はね~、弱いと思います。
大人の対処というか、二人は弱さとか欲望とかいろんなものの落としどころを見つけたがっていて、苦しんではいたけれど実はあれが一番楽な方法で、結果ああいう形になったのではないかと。
自分もそうだからそう見えるんだけど。

>ちなみに小野くんはコンビニの場面で駄目だ…!と思いました。

「もしも俺が迎えに行くって言ったら、もっと俺のことを好きになってくれる?」ですか。
空猫ちゃん、けっこう気が長いねw
私はもう、最初の方の、葉山先生が小野君のまばたきの回数の多さを指摘した時にむっとした所で駄目だと思いました。
自分がカッコつけなので、カッコつけな人はちょっと・・・
指摘されて恥ずかしかったなら、恥ずかしそうに気まずそうにしてる人が好きですw

黒川君は確かに男前って言葉がピッタリだねw
葉山先生のような状況には決してならないタイプの人に思えます。
王道を行く人というか、日の当たる人生を真っ直ぐ進んで行きそうです。
2008/09/23(Tue) 02:20 | URL  | のさかりう #uv1XZDJs[ 編集]
こんばんは。
トラックバックさせていただきました。

トラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
2009/02/26(Thu) 05:42 | URL  | 藍色 #-[ 編集]
■藍色さん
こんにちは。
トラックバックとコメントをありがとうございました。
こちらからもトラックバックをさせていただきました。

こうやって読んだ本を記事にしておくと、忘れた頃にトラックバックやコメントを頂けて嬉しいですw
読んだときの気持ちを思い出しました。
ありがとうございました。
2009/02/26(Thu) 12:17 | URL  | ノサカ レイ #uv1XZDJs[ 編集]
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お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、 あなたにはそうする義務がある― 大学二年の春、母校の演劇部顧問で、 ...
2009/02/26(Thu) 05:40:25 |  粋な提案
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